大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(ネ)2730号 判決

(1) 本件において、被控訴人が遠藤源太郎に対し本件建物につき買取請求をしたのが前記判決の確定後であることは前示のとおりであるけれども、そもそも借地法第一〇条に定める建物買取請求権の行使は、建物収去による土地明渡の請求権自体に直接付着している抗弁権の主張ではなく、借地権者に対し借地上の建物建設などのため投下した資本回収の途を開き、地上建物の取りこわしによる国民経済的損失を防止するなどという立法政策上の考慮から認められた権利の主張、いいかえれば、建物収去による土地明渡請求権とは独立の関係にある権利の主張とみるのが相当であるから、前記建物収去土地明渡請求訴訟における判決確定の基準時(事実審における最終口頭弁論期日)後においても、その権利の主張を妨ぐべき必然的な理由はなく、このことは請求に関する異議の訴によらず、本件のごとく買取代金請求訴訟でこれを主張する場合においても同様であると解すべきである。

(2) ただ本件においては、買取請求権行使の相手方が土地所有者たる遠藤源六ではなく、同人からの使用借主たる遠藤源太郎である。そこで控訴人らは前記確定判決が存在する以上、その判決の確定後に被控訴人のした買取請求によつて源太郎が本件建物の所有権を取得すれば、源太郎は確定判決の執行力の及ぼさるべき「口頭弁論終結後ノ承継人」(民事訴訟法第二〇一条第一項)に該当するから、源六による本件建物収去の執行を甘受しなければならぬ立場に置かれることになり、本件建物はその存立を許されないことになるため、このような建物を対象とする買取請求にあつてはその効力を認めるべきではない旨を主張する。しかしながら、土地所有者からの建物収去土地明渡請求訴訟における「口頭弁論終結後ノ承継人」として、当該建物の譲受人がその建物収去による土地明渡しの執行を甘受するほかないのは、その譲受人が当該建物をその敷地上に存置所有しうべき関係にあることを右土地所有者に対して主張しえない立場にある場合、すなわち土地の無権原占有者たる地位を前主から承継したにすぎない場合であつて、右建物譲受人に対しこれを単なる無権原占有者であるとして土地所有者が建物収去土地明渡しを求めえない関係にある場合には、建物譲受人は建物収去の執行を甘受する必要がないことはいうまでもない。

(多田 上野正 岡垣)

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